こんにちは、Dr.アシュアです。今回は腸重積についての論文を紹介したいと思います。
腸重積は、お腹の中で腸が重なり合ってしまうことで起こる腸閉塞の一つで、小児だと2歳前後に多い病気です。
血便・嘔吐・腹痛を3徴候として、小児の急性疾患・救急疾患としては有名な部類の病気です。
この病気の治療は、肛門からなんらかの物質を逆に入れることで、変な形になってしまっている腸をもとの形に戻すということを行います。
入れるものは、造影剤だったり空気だったりします。
空気が抜けてくしゃくしゃになった浮輪に、空気を一杯に入れるとパンパンになってきれいな形になるようなイメージです。
この病気、治療した後にも再発することがあって、僕の病院でも治療後1日くらいは経過観察のために入院を継続することが多いです。
今回紹介するのは、腸重積の治療後に再発率がどれくらいあるか、というテーマのメタアナリシスです。
まずは、今回の主役に登場してもらいましょう。
Pediatrics. 2014 Jul;134(1):110-9. PMID: 24935997
Recurrence rates after intussusception enema reduction: a meta-analysis.
Gray MP, et al.
では、見ていきましょう。
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背景と目的-Background and Objective
腸重積のための浣腸治療後に、どれだけの症例が再発してしまうか、は論文によって色々と異なっています。再発がどれだけあるかの懸念は、治療後の管理に直結します。
こういった背景から、著者らは、小児の浣腸治療後の腸重積の24時間の再発率、48時間の再発率を推定するために、系統的レビュー・メタアナリシスを行いました。
方法-Method
1946年から2011年12月まで、PubMed、Cochrane Database、およびOVID Medlineというデータベースが検索されました。放射線学的に証明された腸重積が浣腸回数の減少を報告する浣腸と再発の回数を含む腸重積を認めた。放射線学的に証明された腸重積に対して、どれだけ浣腸治療を行ったか、どれだけ再発があったかが報告された論文が69件ありました(0-18歳の患者さんが対象)。論文の抽出は第1著者(M.P.G.)によって行われました。
結果-Results
治療法の浣腸は、3つの方法で分類されていました。
・造影剤による浣腸
・超音波検査を併用した造影剤を使わない浣腸
・X線透視下での空気浣腸
全体での腸重積の再発率は、このような形でした。
全体の再発率
・造影剤による浣腸 ⇒ 12.7% (95%信頼区間: 11.1%-14.4%, I2 = 28.8%)
・超音波検査を併用した造影剤を使わない浣腸 ⇒ 7.5% (95%信頼区間: 5.7%-9.8%, I2 = 52.4%)
・X線透視下での空気浣腸 ⇒ 8.5% (95%信頼区間: 6.9%-10.4%, I2 = 50.1%)
24時間以内での腸重積の再発率は、このような形でした。
24時間以内の再発率
・造影剤による浣腸 ⇒ 3.9% (95%信頼区間: 2.2%-6.7%, I2 = 47.0%)
・超音波検査を併用した造影剤を使わない浣腸 ⇒ 3.9% (95%信頼区間: 1.5%-10.1%, I2 = 0.0%)
・X線透視下での空気浣腸 ⇒ 2.2% (95%信頼区間: 0.7%-6.5%, I2 = 59.8%)
48時間以内での再発率は、このような形でした。
48時間以内での再発率
・造影剤による浣腸 ⇒ 5.4% (95%信頼区間: 3.7%-7.8%, I2 = 32.3%)
・超音波検査を併用した造影剤を使わない浣腸 ⇒ 6.6% (95%信頼区間: 4.0%-10.7%, I2 = 0.0%)
・X線透視下での空気浣腸 ⇒ 2.7% (95%信頼区間: 1.2%-6.5%, I2 = 73.8%)
含まれた研究は、ほとんどが後方視的で、報告の質は様々でした。再発のタイミングを含めた詳細な患者の特徴が報告された研究はほとんどありませんでした。
結論-Conclusions
浣腸減少後の早期(48時間以内)の再発のリスクは低いので、良好な経過の患者の場合、治療後に外来管理が考慮されるべきだろう。
なにが分かったか
腸重積に対する3つの治療法において、腸重積の全体の再発率、24時間以内の再発率、48時間以内の再発率が示した論文をご紹介しました。
全体の再発率として10人に1人くらいというのは、小児科医の中では、良く知られている事実です。
今回の論文の結果である、”1-2日で再発するケースはそれほど多いわけではない”ということも、実臨床に携わっている自分の経験に照らし合わせてそれほど違和感がありません。
しかし、1-2日入院して経過を見ても、再発する人は”その後に”再発しているんだな…ということは一つ再認識できました。
それならば、腸重積の治療後にわざわざ入院して経過を細かく見なくてもよい(=経過を見ても見なくても結果は変わらない)、かもしれませんね。
今回は以上となります。