こどもで使う解熱剤と言えば、アセトアミノフェン。
色々な名前の製剤が出ています。
アンヒバ、アルピニー、コカール、カロナールと言ったものが一般的でしょうか。
点滴製剤だとアセリオなんてものもあります。
子どもに処方される薬の中で、ベスト10には確実に入る薬剤なのではないでしょうか。この薬、知っての通りだと思いますが、座薬と粉薬とシロップがあります。
さて、この解熱剤にまつわる質問で、お母さん・お父さんがほぼ必ず小児科で聞かれたことがあるであろう質問があります。
ほら~、聞かれたこと、あるでしょう?
今回はこちらの解熱剤について 座薬VS粉薬VSシロップ と題して、徹底比較してみようと思います。
始めに結論を図示しておきます。
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目次
VSのその前に。解熱剤の効果について
アセトアミノフェンの効果を考えるについては、文献を見つけたので引用しておこうと思います。
アセトアミノフェンの効果 平均(±標準偏差) (最小-最大)
最大効果 2.2(±1.0)℃ (0.9-4.6)
効果が最大になるまでにかかる時間 194(±74)分 (80-360)
1℃下がるまでの時間 73(±35)分 (0-171)
1℃以上解熱している時間 257(±160)分 (0-480)
鈴江純史ら 外来小児科 9(2): 132-141, 2006.
この文献では、アデノウイルス感染症のお子さんが多く、それで少しデータが偏っていると筆者は書いていました。
海外での報告では、文献を集計して検討した論文を引用しておきます。古いですが、参考になりそうです。
アセトアミノフェン10mg/kgの投与後,1.6℃の最大効果が約3時間後にみられ,1℃以上の解熱している時間が約4時間持続する。
そもそも解熱剤ってどういうとき、どれくらいの間隔で使うの?
アセトアミノフェンの基本的な効果は、解熱・鎮痛作用=熱を下げる、痛みをとるというものです。
ですから、熱がバンバン出ていても、ごはんをよく食べ、元気でよく眠れるお子さんの場合は、アセトアミノフェンは使う必要がありません。
またアセトアミノフェンの添付文書には、低出生体重児、新生児、3か月未満の乳児に対する安全性は未確立とあります。
かかりつけ医と話あって処方されたのでなければ、生まれて間もない赤ちゃんには使うことは避けた方がいいでしょう。
アセトアミノフェン使用のタイミング
個人的に良く外来で説明している使用のタイミングは以下の二つです。
熱が高くてごはんを食べない時
熱が高くてぐったりしている、眠れない時
ご飯を食べさせるために使う、ぐっすり眠らせるために使うといったイメージを伝えるようにしています。
アセトアミノフェン使用の条件、使用の間隔は?
そして使える条件ですが、体温は38.5度以上で使用しましょう。
使用の間隔は一般的な処方の量(1回量が10mg/kg)であれば、4-6時間おきに繰り返して使用してOKです。
アセトアミノフェンの副作用に、肝障害がありますが、60mg/kg/dayか、成人の投与量のMAX(1500mg/day)の量を超えなければ危険性は低いです。
10mg/kgを1回量と考えて、4時間ごとに正確に投与すると、1日6回で60mg/kgになるのでこれが一つの最大量となります。
解熱剤の効果 座薬・粉薬・シロップは違うのか?
座薬と粉薬とシロップの解熱効果の違いがあるかについては、はっきりした文献は見つけられませんでした。
これは裏返すと、効果の差は明確なものはない、という事ではないでしょうか。
自分の子どもに使用した経験や、周りの医師に聞いた印象では、明確な差はないと思います。
さらに詳しく
光栄なことに、この投稿をアレルギー専門医ほむほむ先生が、ご自身のブログに引用下さり、座薬と内服でどちらが効果が違うかどうかについてのメタアナリシスを探し検証してくださいました!
ご興味のある方は、是非是非!ほむほむ先生のブログをご参照ください!
自分が欲しい文献を思い通りに探す力、というのは実は優秀な臨床医であるほど上手です。この事実だけでも、ほむほむ先生の優秀さをうかがい知ることが出来ます。
先生は、臨床医としてビシビシ仕事されているだけではなく、小児アレルギー専門医として学会でも本当に精力的に仕事をされております。相当ご多忙の中、ブログもバシバシ更新されていて、本当に尊敬する先生のおひとりです。
しかし、座薬と粉薬・シロップでは、当たり前ですが、肛門から投与するか、口から投与するかが違います。
投与経路が全く違うので、こどもの状態によって使い分ける必要があります。
ポイント
咳などで吐いている場合
座薬〇
粉薬×
シロップ×
ポイント
嘔吐はないけど、何度も下痢している場合
座薬×
粉薬〇
シロップ〇
飲みやすさ・使いやすさのランキングは?
味については、もちろんシロップの方が断然よいでしょう。
粉薬は苦みはないので、飲ませることに関しては困難は少ないと思います。個人的には粉薬で飲めなかったという話はあまり聞いたことはありません。
使いやすさについては、これも子どもの特性によって変わってくると思います。
薬が苦手で飲み込むのが上手くできない、オエオエしてしまう子の場合は、座薬がよいでしょう。
座薬を入れられるのが嫌すぎて、必死で抵抗するお子さんの場合には、粉薬かシロップがよいでしょう。
ただし、座薬については「使いやすさ」について、注目しておかねばいけない利点が一つあります。
それは、「眠っている間に入れやすいこと」です。当たり前かもしれませんが、粉薬・シロップは、眠っている間に使用する場合は、一旦起こしてから飲ませる必要があります。
座薬の場合には、寝ていても肛門に入れてしまえば終わりなので、この点については大変優れていると感じています。
保存期間については?
解熱剤は自宅で保管しているお母さん方も多いのではないでしょうか。
大原則として、解熱剤や予防薬以外のお薬は、病気が治ったら基本的に処分しましょう。その上で話をしていきます。
注意ポイント
アセトアミノフェンの保存可能な期間
粉薬⇒2週間
シロップ⇒冷蔵で1週間
座薬⇒冷蔵で1年程度
保存可能な期間については、座薬がダントツのトップです。ただし、長く保存できるからといってそれが長所に直結するわけではありません。
特に小さいお子さんにとっては、1年も時間があれば当然成長して体重が重くなります。
1年前の座薬を使用した場合に、処方されたときよりも体が重くなっているため、相対的に薬が足らない事態が起こります。
ですから、小さなお子さんを育てているご家庭では、座薬の保存可能な期間は、せいぜい半年くらいと考えておいた方がよいと思います。
まとめ
以上行ってきた検討をまとめてみると・・・
以上となります。解熱剤を処方してもらうときの参考になれば幸いです。