こんにちは、Dr.アシュアです。忙しい子育ての合間に「いつか家族で旅行に行きたいな…」なんて思うこと、ありますよね。でも、いざこどもと一緒に旅行するとなると、色々と不安なことも多いのではないでしょうか。
今回は「こどもと飛行機で旅行」をテーマに、こどもと飛行機にまつわることを書いていきたいと思います。
そもそも子供にとって飛行機に乗ることってどんな影響があるの?ということから、色々と調べてみました。
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目次
飛行機の中の環境って、地上とどれくらい違うの?
飛行機の中の環境はどんなものなのでしょうか。そしてそれが子供に与える影響はどんなものがあるのでしょうか。色々と調べてみると面白いことが分かりました。
飛行機の外では人は生存できない
一般の航空機は、高度1万メートルの上空を飛んでいます。航空機の外の環境は下記の通りです。
飛行機の外の環境
気圧:0.2気圧
気温:-50℃
湿度:0%
しかも航空機は、時速約900kmで飛んでいます。当たり前ですが、こんな環境では人は生存できません。
飛行機の中の環境は?
航空機は、「与圧」「温度・湿度調整」「換気循環」の空気循環システムによって、人が快適に過ごせるように機内の環境を整えています。
飛行機の中の環境
気圧:0.8気圧
気温:23~24℃
湿度:10-20%
気温はそこそこですが、気圧は富士山5合目に匹敵しており、湿度的には砂漠並みです。
さらに、我々の体に影響を与える他の因子として、地上とは異なる点がいくつか挙げられます。
・気圧が比較的急激に変化する(特に離着陸時)
・揺れる
空気循環システムによって航空機内の環境は安全なものに保たれていますが、それでも地上とは様々な点で違いがあります。
この”違い”がこどもを飛行機に乗せた際に起こるトラブルに関連してきます。
こどもを飛行機に乗せるときに起こるトラブルとは
気圧低下
上空の機内気圧は約0.8気圧。前述のように、これは富士山5合目に相当する気圧の低さです。
健康な人だと動脈血酸素飽和度が98mmHg ⇒ 55mmHgまで低下します。
SpO2モニター(よく小児科外来で指先に巻き付けて測る酸素の機械です)で言えば、100%⇒90%まで下がるような状態です。
健康な子供では呼吸・循環への影響は少ないですが、新生児や、心疾患、呼吸器系疾患、脳血管障害(脳出血、脳梗塞)、重度の貧血がある場合には、注意が必要です。搭乗のために航空会社に診断書を提出する必要があるケースもあります。
新生児や基礎疾患があるお子さんをお持ちのご家庭では、事前に主治医に相談しておくべきでしょう。
腹部膨満
また、気圧低下は約25%程度の体積の膨張を起こします。高い山に登るとポテトチップスの袋がパンパンになる、あの現象です。
もちろん人体にも同じ影響が起こりますが、空気が入っている組織(例えば、中耳、副鼻腔、腸管)がより影響を受けやすいです。
腸管のガスが多いとより気圧の変化によって影響を受けやすいので以下のようなことに注意するとよいでしょう。
ココがポイント
・飛行機の搭乗前からガスを発生しやすい飲食物(炭酸飲料、イモ類・豆類、肉類)は避ける
・航空機に搭乗中は、げっぷやおならは我慢させない
・ゆったりした服装で過ごす(過ごさせる)
気圧の変動による耳の詰まり感
気圧が変動することによって耳鳴りがしたり耳が詰まったような感覚が生じることがあります。これに対しては、いわゆる「耳抜き」が必要ですが、年長児でも大人のようにはできないと思います。
会話したり、何か飲食することで自然に耳抜きされることが多いので、お子さんが耳に関する不快感を訴えた場合には何か食べさせたりすることが有効です。乳幼児では、授乳したり、おしゃぶりをしゃぶることで耳抜きが出来ます。
大量に鼻汁が出ていたり、中耳炎・副鼻腔炎の治療中の場合には、耳抜きがしにくい状態になっているので注意が必要です。理想的には耳鼻咽喉科を受診して、治癒してから飛行機に乗せたいものです。
なお、離陸時よりも着陸時に耳の詰まり感は強くなります。実際に着陸態勢に入ってからでは遅いことが多く、着陸前の化粧室の利用を促すアナウンスの時点など、少し早めに対応しておくとよいでしょう。
飛行機の種類によっては少し気圧を高く維持できる機体(ボーイング787など)もあるので、以前に離着陸時にお子さんが大騒ぎしてしまったという経験をお持ちのご家庭では、選択肢の一つになるかもしれません。
機内の気温
約23~24℃で調整されていることが多いので気温としては快適に過ごせると思います。
ただし、空調がこどもの体に直接あたることがあるため、体感温度は少し低いかもしれません。掛物などで調整する準備をしておくとよいでしょう。
機内の湿度
加湿のために多量の水を航空機の機体に搭載したりはしないため、最新鋭航空機を除いては客室には加湿器がないのが一般です。長時間のフライトの場合は、湿度が約10-20%くらいと低くなります。前述のように砂漠並みの湿度と言い換えてもいいでしょう。
湿度が低いと、皮膚から蒸発する水分・呼吸で外に出る水分が多くなります。飛行機の中は、地上よりは脱水になりやすい環境です。
やはり自らの手で乾燥からこどもたちを守る必要があります。こまめな水分補給や、年長児ならマスクをするなどの対策がオススメです。
飛行機の揺れ
飛行機の離陸・着陸の際、また飛行中でも乱気流の影響によって「揺れ」が起こります。長時間のフライトで慢性的に揺れが起こっていると、「乗り物酔い」を起こすことがあります。
乗り物酔いをしやすいお子さんの場合は、まずは一番揺れにくい席を確保することがオススメです。飛行機では翼の前縁の上のシートが一番揺れにくいです。そのほか、以前の僕のブログでも乗り物酔いに対する対処法などを書いていますのでご興味のある方はご参照下さい。
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こどもの飛行機搭乗に関する大手航空会社の対応は?
大手の日系航空会社では、子どもの搭乗に関しての情報提供がされています。これらは海外への旅行の際でも大きな違いはありません。
ANAが子どもと一緒に飛行機に乗る際の注意点をまとめた情報サイトを作っており、とても読みやすく良質です。もしご利用される航空会社が違っていても、必ず参考になると思うので一読の価値アリです。
JALでは「JALスマイルサポート」というサイトがあり、子どもの飛行機搭乗に関する情報提供をしていますが、こちらはどちらかというと搭乗に関する条件(料金やチャイルドシートなど)に関する情報提供がメインです。
JAL⇒JALスマイルサポート
座席確保はどうする?
長距離路線でも幼児の年齢によっては無料あるいは低料金で利用できるために、座席を子どものために確保しない方もいるでしょう。
座席確保、チャイルドシートについても各社での対応が異なっていて、一定の決まりはありません。
これは完全に僕個人の考えですが、長距離路線では、親にとってもお子さんをずっと抱っこしていることは負担だと考えられるため、座席確保を行い、2歳まではチャイルドシートを使うことをオススメします。
参考に全日本空輸(ANA)、日本航空(JAL)の座席確保・チャイルドシート・料金についてを調べて比較してみました。(2018年9/30調べ)
ANA | JAL | |
チャイルドシートについて | ||
貸し出しがあるか | × | ○(無料) |
持ちこみ使用がOKか | ○ | ○ |
国内線の小児運賃 | ||
生後8日~満3歳未満 席確保なし |
無料 | 無料 |
生後8日~満3歳未満 席確保あり |
大人の50% | 大人の50% |
満3歳~12歳未満 (席が必要) |
大人の50% | 大人の50% |
国際線の小児運賃 | ||
生後8日~満2歳未満で 席確保なし |
大人の10% | 大人の10% |
生後8日~満2歳未満で 席確保あり |
大人の75% | 大人の75% |
満2歳~満12歳未満 (席が必要) |
大人の75% | 大人の75% |
ちなみにチャイルドシートの持ち込みについては、ものによって持ちこめない場合もあるので下記のサイトをチェック頂いた方が賢明です。
ANA⇒チャイルドシートについて
いつから航空機に乗れますか?
国際航空運送協会(International Air Transport Assosiation:IATA)より搭乗に適さない状況が定められており、その中に生後7日以内の新生児という記載があります。
JAL、ANAでもこの国際航空運送協会(IATA)の定めた基準を採用していますが、この数字自体には医学的根拠は乏しいです。
生後8日以降は航空機に乗せるには特別な手続きが不要だ、という意味しかない、ことをよく理解しておく必要があります。
生後8日以降で見つかる先天性心疾患もなくはないですし、新生児はまだ何も予防接種をしていないということも心配な要素です。
色々調べてみても、首が座る3か月から~、主要な予防接種が終わった6か月から~、予防接種がひと段落する2歳から~など
色々な意見があるようでまとまっていないのが実情のようです。
という訳で「飛行機搭乗が安全に行える年齢」については確固となる根拠のある情報はありませんでした。
旅行の目的と年齢、旅行先、旅行期間などの全体的なバランスで決定すべき
小児科診療 2012: 75 1897-1901
このようにバランスで決めるしかないのだと感じました。
まとめ
こどもと飛行機搭乗について書いてきました。
前述の通り飛行機の中は地上とは異なる環境です。長いフライトを予定しているご家族は、事前に十分な情報を収集して準備しておくとより安心だと思います。
今回は以上となります。参考になれば幸いです。