こんにちは、Dr.アシュアです。前回乗り物酔い・動揺病についてのことをお話しました。
-
乗り物に酔いやすい子供の特徴は?その仕組みも解説!
こんにちは、Dr.アシュアです。旅行などで遠出した時、お子さんが車に酔って嘔吐してしまうこと、たくさんのお母さん・お父さんが経験している事なのではないでしょうか。一度酔って気分が悪くなってしまうと旅行 ...
続きを見る
今回は、その対策方法についてお伝えしたいと思います。今日からできるものばかりなので、参考になれば幸いです。
スポンサーリンク
目次
乗り物酔いの一般的な対策方法
まずは、一般的な対策方法について書いていこうと思います。
エビデンスについては段落の最後の方にまとめていますので、興味のある方はご覧ください。
睡眠不足、満腹・空腹を避ける
乗り物に乗る前日は十分な睡眠をとり、睡眠不足の状態で乗り物に乗らないように心がけましょう。満腹、空腹どちらも乗り物酔いの誘因になるので、これも避けましょう。
地平線や遠く離れた静止物を見る
安定した視覚基準点をとることは、乗り物酔いのリスクを減らすとする報告があります。
遠く離れた静止物とは、「景色」が一つの例になります。遠くの景色を見ることで、自らの体が動いていることを脳に教えることが出来ます。そうすることによって、耳の迷路と、視覚情報のズレを補正することが出来ます。
読書や画面を見ることを避ける
耳の迷路と視覚情報との間の情報摩擦を増加させる可能性があるため、やはり読書やゲームなどは乗り物に乗っているときには避けた方が良いでしょう。
乗り物によって動きが少ない座席が違うため、一番動きが少ない座席を選ぶ。
動きが大きい座席ほど酔いやすいというのは、実験でも示されている事実です。酔いやすい人は、動きが少ない座席を選択することが有効です。例えば、乗り物別には以下のような座席がオススメです。
酔いにくい乗り物の座席
ボート:下部デッキと船内キャビン、中央の座席が揺れにくい
車:前席
飛行機:翼の前縁の上のシートが推奨
列車またはバス:前向きの座席(バスの場合は前側の席がよい)
そもそも乗客にならない
車の運転手は、視覚情報が前庭の動きの検出と一致するため、乗客よりも酔う可能性が低くなります。
どうしても乗客にならざるを得ない場合は、なるべく前席に座って、まるで運転しているかのように道路に視線を向かわせることで酔う可能性を下げることが出来ます。
お子さんにはできない対処法ですが、お父さん・お母さんどちらかが酔いやすい場合は、酔いやすい人が運転手になることで被害を最小限にすることが出来ると思います。
その他
悪臭、高温、高湿度なども悪影響になるので、窓を開けられて風に当たれる場所に行くことも大事です。
また、前の投稿でも書いたように『きっと酔う』と思っていると悪影響なので、酔うこと自体に集中しないようにしましょう。
おしゃべりしたり、すきな音楽を聴いたりすることなど自分なりの方法を事前に考えておくとよいです。
これらの対処方法のエビデンスは?
有効性に関するデータは限られていますが、いくつかの研究で、安定した視覚基準点(遠くをみること)、動きの中での読書の回避、運転することによって乗り物酔いのリスクが減少する可能性が示唆されています。
Aviat Space Environ Med. 2005 Dec;76(12):1111-8.
Aviat Space Environ Med. 2013 May;84(5):473-7.
Aviat Space Environ Med. 2003 Mar;74(3):220-7.
さらに、より多くの動きのある座席は、乗り物酔いのリスクを増加させることと関連しているという報告もあります。
Aviat Space Environ Med. 2000 Dec;71(12):1181-9.
乗り物酔いの補助的な対策方法
Uptodateには、ショウガおよび指圧バンドの使用という2種類の対処方法が記載されていました。
下記にあるようにエビデンスはまだまだ乏しいので、眉唾と考えてお読みください。
具体的には、運動酔いしやすい場合、もしくはすでに症状が出ている場合でも、ジンジャーキャンディをなめたり、指圧バンドを使用することが、有益であり得ると書かれていました。
乗り物酔いに対するショウガの有効性
海軍の士官候補生における無作為化試験などで、1〜2gのショウガを事前に投与することが有効であることが報告されています。
Acta Otolaryngol. 1988 Jan-Feb;105(1-2):45-9.
Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol. 2003 Mar;284(3):G481-9.
ショウガが車酔いに対して良い影響を与える理由ははっきり分かっていませんが、
いくつかの研究では、ショウガが胃運動性に影響を与えることが示唆されています。
Acta Otolaryngol. 1989 Sep-Oct;108(3-4):168-74.
Dig Dis Sci. 2005 Oct;50(10):1889-97.
他の研究では、ショウガのセロトニン受容体サブタイプに対する効果が示唆されていました。
Eur J Pharmacol. 2006 Jan 13;530(1-2):136-43. Epub 2005 Dec 20.
Amazonや楽天で見てみると、いくつか商品がありました。
乗り物酔いに対する手首の指圧の有効性
手首の指圧ポイントを、手動またはリストバンドのいずれかにより指圧することで乗り物酔いを減らすことが出来るという報告があります。
指圧するポイントはちょっと分かりにくいので私の手の写真を出してみます。
手首から指三本分内側にずらした位置で、腕の内側の中央あたりです。眉唾感バリバリですが、Uptodateからの引用なので悪しからず。
この手首に指圧、乗り物酔いに有効であるという報告もある反面、有効ではないという報告もあります。
手首の指圧ポイントに電気刺激を加える装置を用いた無作為試験では有用性はないと結論付けられています。
Aviat Space Environ Med. 2007 Apr;78(4):408-13.
Amazonや楽天で探してみると、このリストバンド、商品化されているようです・・・驚きですね。
このタイプの臨床試験は、指圧をする群、しない群に対象者を割り当てるときに、どちらの群に割り振られたかを分からないようにすることが出来ません。
割り当てられた時に、指圧する群かしない群かはわかっちゃいますから。
この種の臨床試験はプラシーボ効果を除外することが重要です。
『指圧した事実だけで、もしかすると乗り物酔いしなくなるかも!と対象者が期待して、実際に乗り物酔いが減ってしまう』ことが今回のケースで言うプラシーボ効果です。
前述したように、心の持ちようも酔いやすさに影響を与えますから、このプラシーボ効果を何とか除外しないと、指圧そのものの効果は検証できないというわけです。
繰り返しになりますが、どちらの群に割り振られたかを分からないようにすること(盲目化だったり、ブラインドと言ったりします)は、事実上困難なので、プラセボ効果の除外が出来ません。
だから『指圧をすること』それのみの効果を検証するのはかなり難しいわけです。
現状では指圧がプラセボ効果以上の利益をもたらすかどうかは不明でしょう。
ただ、圧するだけで効果があるのならば、知っておいて損ではないと思いました。
心理的要素が乗り物酔いに影響を与えるのは事実なので、実際効くかもと思って行えば効いちゃうかもしれません。
まとめ
乗り物酔いに対する一般的な対処方法と、補助的な対処方法について概説しました。すぐに取り入れる事ばかりなので、参考にして頂けたら幸いです。
以上となります。次回はさらに薬物療法について踏み込んでいこうと思います。