こんにちは、Dr.アシュアです。
以前、ブログの投稿へあるお母様から質問を頂きました。
頂いた質問
転居先で、かかりつけ医を選ぼうと思っているのだけれど、どんな点に注意して選んだらよいかアドバイスが欲しい
今回はこの質問に答えていこうと思います。
目次
はじめに
ブログの他の記事を書きながら色々と自分なりに調べてみましたが、これという指針があるわけではないようです。
僕自身、エビデンスがないものをブログに載せることに抵抗感があり、なかなか文章にできないまま時が過ぎてしまいました。
とは言え、せっかく頂いたブログへのご質問。何かお返ししたいと考えた結果、当院の複数の小児科医に「自分の子どものかかりつけ医を選ぶときにどんなことを気にしているか聞いてみよう!」と思いつきました。そしてその意見に僕の考えも加えて、記事にしてみることにしてみました。
ただ、大前提としてこれだけは声を大にして言わせてください。
この投稿には、エビデンスは皆無です。
小児医療の前線で勤務している、いち小児科医の考え方だけだと思ってください。絶対的な答えはないと思いますし、違ったご意見をお持ちの小児科医も他にいらっしゃると思います。そういった前提のもとにお読みいただけたら幸いです。
それではかかりつけ医を選ぶときのポイント、書いていこうと思います。
小児におけるかかりつけ医とは?
まず、小児におけるかかりつけ医の定義を確認しておきましょう。
これについては確固たる定義があるわけではないのですが、診療報酬で2016年4月から新設された『小児かかりつけ診療料の算定基準』を見てみると、厚生労働省、つまり国が”小児のかかりつけ医”をどのように考えているか、をうかがい知ることが出来ます。
この小児かかりつけ診療料というのは、施設基準を満たしているA病院において、「A病院をかかりつけ医として登録します」という同意書を保護者から得られていた場合、登録されているお子さんの診療の際に算定できる診療料のことを言います。
普通の診療料よりも少し診療報酬が高くついているため、医療機関としても、かかりつけ医登録をしてくれている患者さんが増えると、収入UPになります。
そして、小児かかりつけ診療料を算定する場合に「患者さんにこういった指導をしましょう」という決まりがあります。これが、国が考える”小児のかかりつけ医はかくあるべき”という考えを示していると思います。詳しくはこちらを参照頂くのが良いと思いますが、とても細かいので、Dr.アシュアが簡単に要約してみました。
小児かかりつけ診療料の算定基準から見える”小児のかかりつけ医はかくあるべき”
- 急性疾患に対する対応方法、アトピー性皮膚炎・喘息を含めて乳幼児期によくみられる病気の療養指導・診療ができる
- 患者さんが受診している全ての医療機関を把握して、専門医療が必要な場合は適切に紹介できる
- 患者さんの健診の受診状況・受診結果を把握して、発達に応じた助言・指導を行い、保護者からの健康相談に応じることができる
- 患者さんの予防接種の実施状況を把握して、予防接種の指導やスケジューリングを行うことができる
- 患者さんの電話などの緊急の相談に関しては、原則常時対応できる
つまり病気の療養指導・診療、発達の相談、予防接種の調整などをバランスよく行い、近隣の高次医療機関ともうまく連携して必要時には患者さんの紹介もしっかり行ってくれる先生が、かかりつけ医として理想的、ということですね。
ただ、5番目の「電話相談に常時対応できる」というのは、一般のクリニック勤務医でも市立病院クラスの勤務医でもさすがに24時間は無理です。その辺りに関しては、条件付きで24時間対応しなくても良いようになっているようでした。
かかりつけ医を選ぶときのポイントは?
さて、かかりつけ医がどのようなお医者さんが良いのかが分かったところで、僕が自分の勤務する小児科で情報収集した”かかりつけ医を選ぶときのポイント”を書いていこうと思います。
-アクセスビリティ-受診しやすさ
当院の小児科医に色々聞いてみた中で、多かった意見の一つが「受診しやすさ」でした。
受診しやすさの一つに、病院と自宅の距離があるでしょう。
子育てをしているお母さんは何かと忙しいですよね。受診したいときに歩いてすぐ行ける距離にかかりつけ医があれば、やはり安心です。
良く行くクリニックが、車でないと行けなかったり、遠い場合にはやはり何かと不便です。やはりかかりつけ医選びで重要なポイントの一つにアクセスのしやすさ=アクセスビリティは大事です。
受診しやすさの一つに、病院の診療時間が両親の生活時間と合っているかも大事です。
病院によっては、夕方診療をやっている所もあります(僕も以前そういった病院でバイトした経験があります)。また、近頃は夜遅くまで開いているタイプのクリニックもあったりします。
両親が共働きで仕事から帰宅後しか子供を病院に連れていけないとしたら…。診療時間の長さも「受診しやすさ」に関与する大事な要素だと思います。
-フィーリング-この小児科医と私の相性は合う?
2番目でフィーリングですか!?って怒らないで下さいね。当院の小児科医でもこれを条件に挙げる医師が意外にも多く、僕もビックリしました。このフィーリングは、医者と親御さんの相性だと思ってください。
小児科医も色々なタイプの医者がいますし、どんなタイプの小児科医にも一長一短があります。例えば…
じっくり話を聞いてくれる小児科医は、親身に話を聞いてくれるので好印象を持ちますが、待ち時間は長いかもしれません。
さらっと診察、説明も短い小児科医は、ちょっとドライな印象を持つかもしれませんが、待ち時間は短いかもしれません。
ズバズバ自分の意見を言う小児科医は、頼りがいがあるかもしれませんが、人の話を聞いてくれないかもしれません。
お母さんの意見も取り入れて方針を決める小児科医は、納得診療ができるかもしれませんが、時に頼りないかもしれません。
そしてお母さんのタイプも様々です。
心配が強く、じっくり小児科医と話したいお母さんもいれば、とにかく忙しいので話はそこそこにさっと対症療法のお薬をもらって帰りたいというお母さんもいるでしょう。
ここで、じっくり話を聞くタイプの小児科医と、たくさん話したいご家族とがマッチングすれば問題はないですし、待ち時間が長いのも我慢して頂けるでしょう。
しかし、じっくり話を聞くタイプの小児科医と、ささっと対症療法のお薬をもらって帰りたいお母さんとの組み合わせはあまり良くないでしょう。長い待ち時間に対してクレームが出てしまうかもしれません。
長々書いてきましたが、要は“この小児科医と合うか合わないか”ということです。ちょこちょこ事あるごとに通うのがかかりつけ医ですから、このフィーリング、ばかにできないと思います。
一期一会、結局のところは、数回受診してみてストレスなく受診できるかどうかで判断するしかないのでは?と思います。
-コネクション-地域の基幹病院との連携はどう?
これは僕が思っている、よいかかりつけ医の条件の一つです。
以前僕のツイッターでも呟いたのですが、医師の能力の一つに自分が抱えられない状態の患者さんを「適切な他科」や「適切な医療機関」に連携する能力、があると思います。
『適切なタイミングで、適切な医療機関に繋ぐ』というのは、小児科医としての深い経験が問われるところで、とても高度な能力を要します。
僕はいわゆる地域の基幹病院で働く小児科医ですが、たくさんの開業医の先生と患者さんのやり取りをしています。
色々な開業医の先生がいらっしゃいますが、幸い僕の周辺で開業されている諸先生方はとても勉強熱心です。
・自ら紹介した患者さんの様子を見に来られる開業医の先生
・当院のカンファレンスに毎週参加される開業医の先生
・院内で開催する小児科関連の勉強会の司会者役を務められ、開業医をしながら後期研修医の指導もしてくれる先生
などなど…。僕もまだまだ中堅のDr.ですから、色々な機会でベテランの開業医の先生方の話を聞いたり診療を垣間見るのは、本当に刺激になりますし勉強になります。
完全に個人的な意見で恐縮ですが、もし自分のこどものかかりつけ医を選ぶとしたら、こういったアクティブに地域の基幹病院の小児科医と情報交換をする先生を選びたいなと思います。
ただこれは、基幹病院の勤務医しか分からない情報で、一般のお母さん・お父さんには、こういったアクティブな開業医の先生方を見つける手段がないように思うかもしれません。
そういったときは、その地域の基幹病院の一般外来を受診してこう聞いてみるといいかもしれません。
『こちらに引っ越してきたばかりで、このあたりに住んでいるのですが、かかりつけ医を探しているのです。どこのクリニックが良いでしょうか?』
僕がこう聞かれたら、自分がこどもを任せても良いと思うような開業医の先生をオススメすると思います。
医療はチームです。僕はいつも自分の病院の診療チームを中心に医療業務に携わっていますが、開業医の先生も含めての大きなチームでお子さんを見ていくべきと考えています。重症疾患・複雑な疾患の根本的な治療は基幹病院で行いつつ、普段の診療はかかりつけ医である開業医の先生方のお力も拝借する、といった連携・役割分担が理想的ですね。
そういった意味で、こういう大きな円の外にいるような病院、一か所だけで治療を完結しようとするような病院は、あまり信頼しない方が良いかもしれません。閉鎖的な環境での医療は、間違った医療を修正する力に欠けていると、僕は思います。
まとめ
小児かかりつけ医の定義について、また僕が考えるかかりつけ医の選び方を書いてみました。
最後にもう一度再掲ですが、今回の投稿は、エビデンスはありません。小児医療の前線で勤務している、いち小児科医の考え方だけだと思ってください。
絶対的な答えはないと思いますし、違ったご意見をお持ちの小児科医も他にいらっしゃると思います。
今回は以上となります。何かの参考になれば幸いです。