こんにちは、Dr.アシュアです。
小児科に下痢で訪れるお子さんは、いつの季節もそれなりにいます。
そして、発展途上国などと違い、本邦ではもちろん重度の下痢で大変なことになる前に点滴を行うので、大事に至ることは少ないです。
しかし、下痢・嘔吐などは親も病気をうつされてしまうこともありますし、出来ればかかってほしくない病気の一つですよね。
では、有効な予防手段は何でしょうか。そう、手洗いです。
でも”手洗い”って所詮”手洗い”でしょ?どれくらい意味があるのよ?と思っているお母さん、お父さん…いるのではないでしょうか。
今回は、そんなお母さん、お父さんに、コクランレビューのシステマティックレビューを紹介します。
科学的根拠が、ありました。
さて、今回の主役に登場してもらいましょう。
Cochrane Database Syst Rev. 2015 Sep 3;(9):CD004265. PMID: 26346329
Hand washing promotion for preventing diarrhoea.
Ejemot-Nwadiaro RI, et al.
さあ、見ていきましょう。
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背景と目的-Background and Objective
下痢は中低所得国の子供たちの180万人の死亡の原因です。下痢を防ぐために確認された戦略の1つは手洗いです。
こういった背景から、著者らは、『小児および成人の下痢症状に対する手洗い促進介入の効果を評価すること』を目的としてシステマティックレビューを行いました。
方法-Method
検索方法:
コクラン感染症グループ専門登録簿を検索しました(2015年5月27日)。検索したデータベースは以下の通りでした。
・CENTRAL(Cochrane Library 2015)
・MEDLINE(1966年~2015年5月27日)
・EMBASE(1974年~2015年5月27日)
・LILACS(1982年~2015年5月27日)
・PsycINFO(1967年~2015年5月27日)
・Science Citation IndexとSocial Science Citation Index(1981年~2015年5月27日)
・ERIC(1966年~2015年5月27日)
・SPECTR(2000年~2015年5月27日)
・Bibliomap(1990年~2015年5月27日)
・RoRe:The Grey Literature(2002年~2015年5月27日まで)
・世界保健機関(WHO)の国際臨床試験登録プラットフォーム(ICTRP)、統制試験のメタ登録機関(mRCT)
・および2015年5月27日までの論文の参考文献リスト
選択基準:
小児および成人の下痢エピソードに対する手洗いの効果を介入群と対称群で比較した、個別ランダム化比較試験(RCT)およびクラスターランダム化比較試験
データ収集と分析:
3名のレビューアが独自に論文の適格性を評価し、データを抽出し、そしてバイアスのリスクを評価しました。
子供のデイケアセンターや学校、地域社会、そして病院といった様々な環境で研究が行われているため、それらのセッティングに関して層別化が行われています。
適切な場合には、一般的な逆分散法と95%信頼区間(CI)を含む変量効果モデルを用いて発生率比(IRR)をプールしました。
エビデンスの質を評価するためにGRADEアプローチを使用しました。
結果-Results
22件のランダム化比較試験が適格基準を満たし、メタアナリシスが行われました:
・高所得国の児童デイケアセンターまたは学校からの12件の研究(54,006人の参加者)
・中低所得国での9件の地域密着型の研究(15,303人の参加者)
・後天性免疫不全患者の患者における1件の病院ベースの研究(148人の参加者)
子供のデイケア施設や学校での手洗い促進は、高所得国において、下痢エピソードの約3分の1を防ぎました。
(発生率比0.70、95%CI: 0.58〜0.85、9件の研究、4664人の参加者、質の高いエビデンス)
中低所得国では同様の割合の効果がある可能性がありましたが、エジプトとケニアの都市部で行われた2件の研究のみをまとめたものでエビデンスの質は低いと言わざるを得ませんでした。
(発生率比0.66、95%CI: 0.43-0.99;2件の研究、45,380人の参加者、低品質のエビデンス)
中低所得国の地域社会での手洗いの促進は、おそらく下痢症状の約4分の1を防ぐことができます。
(発生率比0.72、95%CI 0.62〜0.83、8件の研究、14,726人の参加者、中等度の質のエビデンス)。
これら8件の研究のうち6件はアジアでの研究で、2件は南アメリカおよびサハラ以南のアフリカにおける研究でした。
後天性免疫不全症候群の患者の病院、つまり下痢が起こりやすい高リスク集団における病院で実施された、手洗い促進を行った1件の研究では、介入群で下痢の平均エピソードの有意な減少を認めました。
(平均差1.68、95%CI 1.93-1.43; 1件の試験、参加者148人、中等度の質のエビデンス)。
介入群で下痢エピソードが1.68回減少したという意味です。この研究では、対照群では3回/日、介入群では7回/日の手洗い頻度であり、手洗いを勧める介入により、手洗い頻度の増加を認めました。(1件の研究、148人の参加者、中等度の質のエビデンス)。
結論-Conclusions
手洗いの促進は、おそらく高所得国の子育てセンターと中低所得国に住んでいる地域社会の両方で、下痢エピソードを約30%減らすでしょう。
しかし、人々が手洗い習慣を長期に維持するのを手助けする方法については、明確なものがありません。
なにが分かったか
コクランレビューのシステマティックレビューをご紹介しました。いかがでしょうか。
嘔吐・下痢を起こして、病院を受診して、痛い思いをして点滴をして、場合によっては入院・・・というストーリーになってしまう前に、まずは自宅でしっかり手洗いをすることで、下痢のepisodeは30%減らすことが出来そうです。
しかも手洗いはローコスト、これはやるしかないでしょう。
論文中にも示されていましたが、食事前、調理前、トイレを使用した後、赤ちゃんのオムツを変えた後、に手洗いをすべきです。
今回は以上となります。何かの参考になれば幸いです。