こんにちわ、Dr.アシュアです。
さて、今回は痙攣です。おかあさん、おとうさんが一番動揺する、びっくりする症状のナンバー1と言っても良いでしょう。
患者さんの多くは、救急車で病院に着いた時はけいれんは止まっています。実際のけいれんの様子がどんなものだったのかが、問題ないけいれんなのか、入院して精密検査をしなければいけないけいれんなのか判断する上でとっても大事なのですが・・・。診察の時にはもうけいれんしていませんから、お母さん・お父さんからの情報が全てです。でも、大抵の場合ご両親は動揺していますから、「けいれんの様子なんて覚えていません」、とか「寝ていたので暗くてなにもわかりませんでした」というような問答になってしまい、ほとんど情報が取れないなんてことも良くあります。
この項では、日本人のこどものけいれんで最も多い、『熱性けいれん』。これを中心に話を進めていきます。まずは代表的なものを理解しましょう。
熱性けいれんの定義
・6か月~60か月までの乳幼児に起こる
・通常は38度以上の発熱に伴うけいれん
・除外基準に当たらない
これらを満たしたものが熱性けいれんです。
除外基準として以下があります。
・中枢神経感染症、代謝異常、その他の明らかな発作の原因がみられる
・てんかん(熱がない時もけいれんする体質)を持っている
噛みくだくと、『けいれんを起こし得る診断名』がついたときは熱性けいれんになりません。てんかんを持っている子は、熱があるときにてんかん発作(=けいれんです)を起こすことはあり得ます。見た目は熱がある時のけいれんなので熱性けいれんっぽいのですが、そういう場合も熱性けいれんにしませんよ、ということです。
つまり熱性けいれんは、けいれんの原因が『熱』しかないけいれん といってもいいですね。
日本人の小児の6%くらいが熱性けいれんを起こすと言われていますから、かなりありふれた病気と言えますが、けいれんした小児を診察するとき、「これは熱性けいれんだね」と言うには、ポイントがあります。
複雑型熱性けいれん、単純型熱性けいれん??
熱性けいれんを起こし救急外来を受診したことがあるお母さん、お父さんは、単純型とか複雑型とかと言った言葉を聞いたことがあるかもしれません。
この区別は結構大切です。簡単に言えば、
単純型⇒典型的な熱性けいれんと思われる=熱だけでけいれんしたと思われるので、その後の経過も悪くないだろうと推測できる
複雑型⇒熱性けいれんじゃない(=熱だけで痙攣したわけではない)可能性が単純性より高い。つまり、原因検索や特別な治療が必要な場合あり
単純型なら外来診療で帰宅できるけど、複雑型だととりあえず入院で精密検査・治療という方針が多いのはこういった理由になります。
だから、複雑型熱性けいれんという病名は、暫定診断と言ってもいいですよね。その後の経過で、中枢神経系の感染症の髄膜炎とわかったら、複雑型熱性けいれんではなかったということになりますから。
言い換えてみると、複雑型熱性けいれんで入院したわけではなくて、正しくは入院の時は複雑型熱性けいれん疑いという病名で入院することになります。入院して精密検査や治療をしてみて、最終的に熱以外にけいれんの原因が考えにくいな、となったときに晴れて複雑型熱性けいれんでしたね、という話になります。
では、複雑型熱性けいれんの定義を見てみましょう。
複雑型熱性けいれんの定義
熱性けいれんのうち、以下の3項目の1つ以上を持つものを複雑型熱性けいれんと定義し、これらいずれにも該当しないものを単純型とする
・焦点性発作(部分発作)の要素がある
・15分以上持続する発作
・24時間以内に複数回反復する発作
焦点性発作=部分発作というのは、手足の一部分だけが痙攣しているというものです。
通常、良くある熱性けいれんは全身性のけいれん、つまり手足がすべて強直(グーっと力が入って突っ張る)したり間代(ビクンビクンと一定のリズムで痙攣すること)するタイプで左右差がないものです。どちらかの手足しかけいれんしていませんでした、みたいな左右差のあるけいれんだったりすると小児科医は、「複雑型だ。もしかして熱が痙攣の原因じゃないかも?」と思うことが多いでしょう。
次項では以上を踏まえて、けいれんの時にお母さん、お父さんに見てほしい・覚えてほしいポイントについて書いていきます。