こんにちは、Dr.アシュアです。男の子のこどもを持つお母さん、お父さんは、一度はお子さんのちんちんの包茎についての疑問や不安を感じたことがあるのではないでしょうか。外来でもお母さんたちに良く聞かれる質問の内の一つです。
『そもそもウチの子は包茎なの?こどもの包茎ってなに?』
『家の子のおちんちんはこれが正常なの?』
『包茎なら治した方がいいの??このままにしておいていいの???
旦那に聞いても自分の子どものころのことは忘れたって・・・』
世のお母さんたちはこのような形で色々と疑問がわいた結果、病院で医者に相談してみよう!となるみたいです。
今回はこどもの包茎について、特に放置したらいけない『5つのシチュエーション』についてお話したいと思います。
その疑問、これが答えです
現時点では、何も問題のないこどもの包茎を治すべきという意見はないです
包茎治療はした方が良い4つのシチュエーションがあります
尿の勢いがない、ちんちんが真っ赤に腫れるのを繰り返す
膀胱炎や腎臓の感染を起こした、嵌頓包茎を起こした
最後にもう1つ
包皮の穴の部分の皮膚が固く瘢痕化してしまっている時には手術した方が良いです
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目次
現時点では何も問題のない子供の包茎を治すべきという意見はない
おちんちんの皮は新生児の場合はおちんちんにかぶっていて、皮を引っ張ってもその半数以上でおしっこが出てくる穴(尿道口)を見ることは難しいです。しかも、亀頭と皮はくっついているのが普通で、こどもの頃は剥がれないのが普通です。
まずはともあれ『おちんちんの成長』の話をしておかねばいけません。
思春期の頃に男性ホルモンが出るようになると陰茎が育って、時々陰茎が勃起するようになります。陰茎の膨張により包皮が引き延ばされる刺激と、男性ホルモンで増えてくる恥垢(陰茎と包皮の間に出来てくる垢のようなもの)の働きによって、それまでくっついていた包皮と陰茎が剥がれてきます。その過程で包皮の先端(=包皮輪)が引き延ばされて、亀頭が露出しやすくなり、成人の陰茎へ成長していきます。
つまり、『基本的にはこどものちんちんは皮がかぶっているのが普通』ということで、こどもの包茎は病気ではありません。
色々文献を見てみると、”性的活動が不要な子供の時期においては包皮は亀頭保護の意義を持つ”なんて書いてあったりします。
メモ
ここでポイント!
包皮と亀頭がくっついている部分に黄色い垢のようなものが挟まっていて洗っても取れません!これって放置しておいてよいですか?
回答:放置して良いです。これはスメグマといっていわゆる恥垢です。恥垢は、包皮と亀頭の皮膚の癒着を剥がすのに一役買っている物体なので、垢だからと言って無理やり落とす必要はありません。包皮と亀頭の癒着が剥がれてきたら自然に掃除できるようになるのでそれまでは(10年単位で)放置しておきましょう!
しかし実際には、医者の中でも包茎を治すべきか、放置すべきかは実は混沌としているようです。
小児泌尿器科学総会で参加者対象にアンケートをしてみた記録があります。
2001年の記録で少し古いですが医師90名(泌尿器科医が多く、次いで小児外科、小児科の医師)へのアンケート調査です。
専門家でも意見が分かれており、少なくとも積極的に治した方がよいというデータは現時点ではありません。特に問題のないこどもの場合には包茎治療は行う必要はなさそうです。
包茎治療はした方が良い4つのシチュエーションがあります
特に問題のないこどもには包茎治療は必要ありませんが、いくつかの限定された状況では治療を行った方が良いです。
尿の勢いがない(排尿の障害がある)
出口の包皮輪がすごく狭い場合には尿の勢いがでなくなり、たらたらとしか尿がでなくなります。こうなってしまうと尿道から細菌感染を起こす(=尿路感染症と言います)リスクが上がるため、このケースでは包茎治療は行った方が良いと思われます。
ちんちんが真っ赤になって腫れるのを繰り返す(亀頭包皮炎)
『おちんちんが真っ赤になって腫れた!』といって小児科にお子さんを連れて行ったことがあるお父さん・お母さんもいると思います。これは亀頭包皮炎(きとうほうひえん)という割と良く見かける病気で、包皮と陰茎の間が不衛生になり細菌の感染が起こることで生じる病気です。
ちんちんが腫れて赤くなって包皮から膿が出て、痛みを伴い排尿するのを嫌がるので、小児科や小児外科を受診することになります。この場合には包茎を治すことで陰茎を清潔に保つことが出来、再発のリスクを減少させることができるので、包茎治療を行った方が良いです。
膀胱炎や腎臓の感染症を起こした(尿路感染症)
膀胱炎や腎臓の感染症は、おしっこの通り道(尿路といいます)の感染症なので、尿路感染症といいます。これは通常ちんちんの出口から細菌が逆流して起こります。細菌が膀胱にとどまっているレベルの膀胱炎(下部尿路感染症とも言います)ならマシですが、細菌が腎臓まで達する腎盂腎炎(上部尿路感染症といいます)の場合は治療が大きく遅れると腎臓そのものにダメージを残すことがあり、大変危険です。
ただの膀胱炎だけではない尿路感染症は甘く見ると怖いですよ。1回でも起こしてしまった場合には再発予防が大事と考え、包茎治療を行った方がよいです。
嵌頓包茎(かんとんほうけい)を起こした
自己流で包茎治療を行ったりすると起こるたいへん怖い病気です。包皮の出口の狭い所を亀頭が出てしまい、ちょうど亀頭が首を絞められるような状態になって起こる病気です。首を絞められた亀頭や痛みやうっ血でさらに元に戻りにくくなり、早く処置しないと亀頭への深刻な血流障害のため、亀頭が壊死してしまいます・・・(書いているだけで身の毛がよだちます・・・)。
嵌頓包茎の場合も、再発予防をする必要があるので包茎治療が必要になります。
実際の包茎治療について
それでは実際の治療について話してみましょう。治療方法は手術をしない方法と、手術方法があります。私は小児科医なので手術をしない方法をご紹介します。治療はステロイド軟膏を用いて行います。自宅で可能な治療で、それほど難しいものではありません。
目標は、包皮をむいてみた時におしっこの出口がみえる、です。お子さんの年齢によっては、亀頭は全て露出させることはできません。包皮と亀頭の皮膚が癒着しているのが正常な小児の特徴でしたよね?癒着している部分は思春期の時期に自然に剥がれてきますので、無理やり包皮を陰茎から剥がさないようにしましょう。
包茎治療の手順
- 包皮を剥けるところまで剥き、軽くテンションをかける(=包皮のストレッチ運動)
- 一番狭い所の包皮にステロイドを塗る(外側からでOK!)
- しっかり元に戻す
これだけです。入浴の後に1回行えば、1-2か月くらいで狭かった包皮の出口部分が広がって亀頭が見えるようになります。成功率は80-90%以上と言われています。
一旦包茎が治ったと安心して、しばらく包皮のストレッチ運動を行わないでいると、再び穴が狭くなって再び亀頭が見えなくなってしまうことも多く経験されますので、亀頭が見えるようになったらお風呂で1日1回は亀頭が見えるように軽く剥いてくせをつけてあげてください。
くせがついていれば、ステロイド軟膏を塗るのはやめてしまいましょう。ずっと塗っている必要はありません。
①のポイント
無理に包皮にテンションをかけないように気をつけましょう。無理にテンションをかけると、そうですアノ嵌頓包茎(かんとんほうけい)を引き起こしかねません。
嵌頓包茎にならないまでも、包皮の一部分が切れたりして出血してしまったりすることもあります。包皮が切れた結果、一時的には剥けるようになるかもしれませんが、切れた部分は傷なので治る過程で瘢痕化(はんこんか)することがあります。
瘢痕化(はんこんか)とは、皮膚の柔軟な伸展性が失われて硬くなることを指します。
包皮の出口部分の皮膚が瘢痕化(はんこんか)してしまうと、どうやっても亀頭が露出できない状態になってしまいます。こうなってしまうと、もはや外科手術でないと包茎が治せません。
このような状態にならないように、包皮が裂けるほどのテンションをかけてはいけません。やめましょう、絶対に。
②のポイント
包皮の中側にステロイドを塗る必要はありません。包皮の中側はデリケートな亀頭部分なのでここに無理に軟膏を塗ろうとすれば、当然痛いですよね。痛みが伴うとわかってしまうとお子さんは金輪際この処置に協力してくれなくなってしまうかもしれません。
ステロイドは外側の皮膚からでも浸透するので、ご安心下さい。外側から一番狭そうな部分の包皮に塗ってあげてください。
ちなみに、ステロイドは塗った場所の皮膚を薄くし伸展性を増加させる効果でその薬効を発揮しています。
③のポイント
一度包皮が剥けたらくせをつけた方がよいと書きましたが、必ず毎回包皮を元に戻してください。そのままにしないことは非常に大事です。
包皮の出口がまだまだ狭い時期に何らかの刺激で亀頭が大きくなってしまうと、、、そうです亀頭の首絞め事件です、嵌頓包茎(かんとんほうけい)になってしまうかもしれません。
一度包皮を剥いたら必ず戻す。剥いたら戻す。大事な事なので繰り返しますよ。剥いたら戻す、忘れないようにして下さい。
ちなみに、ステロイドを陰部に塗るということに違和感を感じるお父さん・お母さんもいるかもしれません。顔面・陰部はステロイドの吸収力が高いため、ステロイドは過剰に塗っていけないという意見が一般的だからです。
しかし、このステロイドによる包茎治療は、有用性の根拠があります。下記の2つの論文は、ステロイドによる包茎治療の論文を複数まとめて解釈をつけた、システマティックレビューというものです。内容の詳細は割愛しますが、国際的にも有用性が認められた手法と言えます。
まとめ
・何も問題のないこどもの包茎を治すべきという医学的根拠は現時点ではありません。
・いくつかの限定された状況では、包茎治療はした方が良いです。
(尿の勢いがない、ちんちんが真っ赤に腫れるのを繰り返す、膀胱炎や腎臓の感染を起こした、嵌頓包茎を起こした)
・包皮の穴の部分の皮膚が固く瘢痕化してしまっている時にも手術した方が良いです。
・包茎の治療として、ステロイドを使用する方法は国際的にも認められた治療法です。
今回は以上となります。いかがでしたか?お風呂に一緒に入る時にでも、お子さんのおちんちんを確認してあげて下さい。ここに示した5つのシチュエーションに当てはまっていなければ、包茎は必ずしも治すべきものではありません。ぜひ参考にしてみて下さいね。