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青年期に太っていると、成人期に膵臓がんが増える!?

こんにちわDr.アシュアです。

小児期の肥満が全世界的に問題になっていることについては、色々な所で言われていることと思います。

僕の外来にも他の病院や小学校から、基準の範囲を超えてしまった肥満のお子さんが良く紹介されてきて、診療を行っています。

ただ、肥満は「痛くない病気」です。

親も子ども自身も、肥満で具体的に困ったり、苦しんでいたりすることがないケースでは、そもそも痩せようと思ってくれていません。

痩せようと思っていない子ども(+親)を肥満から救うのは、、、、かなり難しいです。

 

ただ、最近若年者の肥満が、やはり将来の人生に大きくかかわるという論文が沢山出てきています。

肥満は、ただ太っているだけ、、ではありません。

 

今回は、青年期に肥満であることが、将来的な膵臓がんのリスクと関わっているのではないか、という結論の論文をご紹介します。有名医学雑誌の、すごく規模が大きい研究ですので、レビューではないですが大事な研究と考えて選んでみました。

 

それでは、今回の主役に登場して頂きましょう。

Cancer. 2019 Jan 1;125(1):118-126. PMID: 30417331

Adolescent overweight and obesity and the risk for pancreatic cancer among men and women: a nationwide study of 1.79 million Israeli adolescents.

Zohar L et al.

Cancerといえば、2019年10月現在 Impact factor: 6.102で、言わずと知れた一流医学雑誌です。

そちらに掲載された相当規模が大きいコホートスタディです。

 

では見ていきましょう。

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背景と目的-Background and Objective

思春期の肥満が成人の健康に及ぼす影響に関する懸念が高まっています。

この研究の目的は、青年期後半の肥満度指数(BMI)と成人期の膵臓癌の発生率との関連を評価することでした。

 

方法-Method

著者らは、1967年~2002年まで16-19歳の間に身体検査を義務付けられたイスラエルのユダヤ人男性1087,358人とユダヤ人女性707,212人のコホートを分析しました。

2012年12月31日までの膵臓癌の発生率は、全国の癌登録機関との連携により特定されました。

米国疾病管理予防センター(CDC)のBMIパーセンタイルに従って、多変量調整Cox回帰を使用して膵臓癌のハザード比(HR)を推定しました。

 

Dr.アシュア
非常に大きな集団でのコホート研究です。今回は、レビューでもRCTでもありませんが、流石にこれだけのサイズの研究だと無視できないという感じですね。

 

結果-Results

中央値23年の追跡調査で、膵臓がんが551症例発生しました(男性423人、女性128人)。

重要な結果について概説していきます。

 

Dr.アシュア
基本的な話ですが、今回コホート研究なので、比較の手法は”ハザード比”というものになります。しかし「膵臓がんの発生」は、そもそも非常に低いものです。発生率が非常に低い場合には、ハザード比≒リスク比と考えてよいというルールがあります。 ですから、例えばハザード比=2.0 という時にはリスク比=2.0とほぼ同等と考えてよいということになります。 少し蛇足だったかもしれませんね、論文の結果に戻りましょう。

 

結果①

通常体重の群(5%tile~85%tile未満)と比較して、肥満群(≧95%tile)は、膵臓がんのハザード比が上昇していました。

男性:HR 3.67; 95%CI: 2.52-5.34

女性:HR 4.07; 95%CI: 1.78-9.29

Dr.アシュア
つまり体重が正常の群と比較して、肥満の群では、男性・女性ともに3~4倍くらい膵臓がんになりやすいということですね。

 

結果②

男性では、正常の中で低めの体重の群(5%til~25%tile)をベースに考えた場合、正常の中で高い体重の群(75%tile~85%tile)および過体重の群(85%tile~95%tile)もがんのリスクが高いことがわかりました。

正常の中で高い体重の群:HR 1.49; 95%CI: 1.05-2.13

過体重の群:HR 1.97; 95%CI: 1.39-2.80

Dr.アシュア
肥満にならないまでも「過体重」という時点で、少し細い体格の人よりも膵臓がんのリスクが2倍近くなるということが分かったという事ですね。

結果①と合わせて考えてみると、体重が増えるごとに膵臓がんのリスクが上がるという見方もできると感じました。

 

結果③

過体重と肥満のために推定される人口寄与割合は、10.9%(95%CI: 6.1-15.6)でした。

Dr.アシュア
人口寄与割合(population-attributable fraction )というのは、今回で言えば、「もし過体重・肥満の人がいないとしたら、何%の膵臓がんの人が減るか」という割合を示したものです。 膵臓がんの何%が過体重・肥満によって起こっているか、と読み替えても良いかもしれません。 つまり、もし過体重・肥満の人がいなくなったとしたら、10%くらいの膵臓がんの患者さんが減少するという事になります。

 

結論-Conclusions

青年期に肥満または過体重だった男性と女性は、その後の膵臓癌のリスクが高くなります。

 

なにが分かったか

結果を要約して再掲します。

ココがポイント

16-19歳の時点で肥満・過体重であった場合には、膵臓がんのリスクが男女ともに3-4倍上昇する可能性がある。

 

もちろん人種が違うので、日本人にそのままこの説を当てはめることは難しいかもしれません。

そして、そもそも膵臓がん自体がかなり少ない病気ということもこの論文の意味を考える意味では重要ですね(この論文でも、180万人をフォローして550人くらいが発症したわけですから、かなり少ないですよね。)。

とは言え、インパクトは大きいですよね、がんですから。

 

Dr.アシュア
やはり「肥満はただ太っているだけではない」のです。

今回は以上となります、何かの役に立てば幸いです。

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