こんにちは、Dr.アシュアです。
今回は、うちの小児科外来で置いてある絵本から、お母さん・お父さんにオススメな絵本を1つ紹介したいと思います。
この絵本、普通の絵本と違う、ちょっと趣向の違った絵本なのですが、お母さん・お父さんだけではなく、子どもに関わる仕事をしている全ての人におすすめです。興味がわいた方は是非最後までお付き合い頂けたら幸いです。
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目次
今回紹介する絵本『いいタッチわるいタッチ』について
突然ですが、今のご時世、こどもはどこでも見知らぬ人にイタズラされたりする危険性があります。男の子だって、女の子だってそのリスクはあると思います。
イタズラでも色々あるとは思いますが、いわゆる性的なイタズラを、医学的に『性的虐待』というタームを使って表現します。
軽いイタズラだけですめばまだましかもしれません。こどもに性的嗜好をもつ大人に運悪く目をつけられた結果、こどもが連れ去られて不幸にも殺されてしまうといった心痛むニュースもありますよね。
ここ最近では2018年5月に起こった新潟小2女児殺人事件が記憶に新しいところです。この事件の犯人は、女子児童に対する複数の犯罪で書類送検されていました。
僕が勤務する病院は、大きい公立病院であったり、都内に近かったりすることもあり、虐待を受けた子ども達が紹介されてきます。
その中には、目を覆いたくなるような性虐待の被害者のお子さんも実際にいます。
僕は、そういった事件や性的虐待の被害を受けたおこさんのことを耳にしたり、診療したりする中で、こう思うのです。
事故・事件に巻き込まれないようにするためには、子ども達の周りの環境を整え守ることはもちろん大事ですが、子ども達自身の教育も大事なのではないかと。
『こどもが自分で自分を守る力』これを育てる必要があると思うのです。
今回紹介する絵本は、そのとっかかりとなる考え方を読みながら学べる、そんな絵本です。
タイトルは『いいタッチ悪いタッチ』です。
ズバリ、この絵本が与えてくれるメッセージは?
この本が与えてくれるメッセージを3つあげてみましょう。
ポイント
体には、自分だけが触っていい場所(これをプライベート・ゾーンと言います)がある。
そこを不当に触ったりすることを「わるいタッチ」という。わるいタッチをされると、怖い気持ち、悔しい気持ち、嫌な気持ちになる。
わるいタッチをされたときには、嫌だと言ってもよい。わるいタッチをされたことを周囲の大人に伝えるべき。
これらのことが、こどもに伝わりやすい言葉で書かれています。
僕がこの絵本をお勧めする理由3つ
そして、僕がこの絵本をご紹介する理由を3つ挙げたいと思います。
出てくるキャラクターが動物で親しみやすく、怖い場面がない点
この絵本に出てくるキャラクターは、動物を擬人化したキャラクターです。リアルで等身大の人間が出てきませんし、絵柄もかわいらしいので、全体的な雰囲気はとても親しみやすいものとなっています。
さらに、怖い場面は一切ありませんから、お子さんに読み聞かせるときも安心です。
『自分だけが触れていい場所』の説明が、子どもにも分かりやすい点
『自分だけが触れていい場所=プライベート・ゾーン』のことをこどもに伝えるために、この絵本ではその「伝え方」が工夫されています。
シンプルに、直感的に、どんな子どもにも理解しやすいように、と筆者のこだわりを感じます。
いいタッチの話もある点
プライベート・ゾーンを侵す『わるいタッチ』だけの話に終始せず、『いいタッチ』にも触れている点もとても好印象です。
読了後の印象が悪くならないように、プラスの印象で終わるように心配りがされているように感じました。
さらに、『いいタッチ』に言及し対比させることで、『悪いタッチ』の輪郭をさらにくっきりさせる効果もあると感じました。
巻末に親向けの情報も書かれている
この絵本には、巻末に著者から親御さん向けに、性的虐待についての情報が5ページほど割かれています。
分かりやすく基本的な情報から、もし被害にあった時にどのように対処するか、そもそも被害を見抜くためのコツなども惜しみなく書かれています。少数ですが、参考文献も載せられています。
親になり、実際にこどもを持ってからでないと、性的虐待に関して興味を持ったり、危機感を持ったりすることはおそらくないでしょう。
そして、僕自身小児科医ですが、小児科医でもいわゆる性的虐待について専門的な知識を持つ人はわずかです。お父さん・お母さんとなれば、その知識はほんのわずかではないかと想像します。
この絵本はもちろんこども向けなのですが、巻末の情報も併せて考えると、こどもの体と心を守りたい全ての人にオススメです。
そして、絵本全体はいわゆる『性的虐待の本』ぽく見えません。
絵本だから、ということもあるのでしょうけれど、外見上はその類の本だという事は全く分かりません。読んでみないと『あ~そういう本なんだね』とはなりません。
店頭で購入される場合には、こういった点もちょっとしたプラスポイントなのではないでしょうか。
まとめ
『いいタッチわるいタッチ』の紹介をしてきました。
最後までお読みいただきありがとうございました。実はこの絵本、うちの小児科外来においてあったりしまして。
こないだ時間のある時にふと気になって読んでみたら、『あ!これいいじゃん、オススメできる!』と思ったのが、今回の投稿のきっかけでした。
以上となります。参考になれば幸いです。