こんにちは、Dr.アシュアです。
突然ですが、皆さんの”喘息の患者さんのイメージ”ってどんなのでしょう。
やせているお子さんがヒューヒューゼイゼイしている、というイメージを持っている人も、それなりにいるのではないでしょうか。
何でしょうね、漫画か何かの影響でしょうか。
喘息と肥満の関連については色々と議論が重ねられてきたようですが、今回ご紹介するシステマティックレビューでは、そういった論文を集め、質を評価して、まとめて、一つの結論を出しています。
結果が興味深かったので共有しようと思います。
さて、今回の主役に登場してもらいましょう。
BMC Pediatr. 2018 Apr 26;18(1):143. PMID: 29699517
Effect of childhood BMI on asthma: a systematic review and meta-analysis of case-control studies.
Azizpour Y, et al.
『喘息と肥満に関連性があるか』という疑問に答えるシステマティックレビューです。
さあ、見ていきましょう。
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背景と目的-Background and Objective
喘息は子どもの健康を脅かす多因子症候群です。
体格指数(BMI)は潜在的要因の1つかもしれませんが、喘息と肥満に関連性があるか否かのエビデンスには議論の余地があります。
こういった背景から、著者らは喘息とBMIとの関連を調査するための包括的なメタ分析を行うこと、を目的に今回のシステマティックレビューを行いました。
方法-Method
電子データベース(Web of Science、Pubmed、Scopus、Science Direct、ProQuest)について、期間を2017年4月までとして、2人の研究者で各々独立して文献検索を行いました。
キーワードは、喘息、体格指数、肥満、過体重、小児および青年を使用しました。
全体的なオッズ比(OR)および標準化平均差(SMD)を得るために、ランダムおよび固定効果モデルを適用しました。
研究間の異質性については、I2およびコクランQ統計を用いて評価しました。
結果-Results
2511件の文献を精査して、包含基準・除外基準に従い、最終的に16件の研究がメタ分析に適格と判断されました。
主要な結果を以下に示します。
結果①
11件の症例対照研究のメタアナリシスからわかったこと
喘息と過体重のオッズ比は、OR=1.64(95%信頼区間:1.13-2.38)
結果②
14件の症例対照研究のメタアナリシスからわかったこと
喘息と肥満のオッズ比は、OR=1.92(95%信頼区間:1.39-2.65)
つまり、過体重および肥満の小児・青年の喘息のリスクは、統計学的に有意に高い(各々1.64倍と1.92倍)ということです。
(両方の場合において低体重/正常体重の群と比較してp値<0.01)
さらに、SMDについて喘息とBMI> 85パーセンタイルとの間に有意な関係がありました。
SMD=0.21(95%信頼区間:0.03-0.38; p値= 0.021)
結論-Conclusions
小児および青年のBMI(肥満/過体重)と喘息との間に有意な関係を示されました。
今後の疫学研究において、喘息とBMIとの関係に影響を及ぼす交絡因子を研究することが重要です。
なにが分かったか
痩せているお子さんよりも、体重が多いお子さんの方が喘息が多いと言うことが分かりました。
ここから何が分かるでしょうか。
一つは、やっぱり肥満は良くないですよ、という当たり前のメッセージが伝わってきます。
もう一つは、著者らも指摘していますが、交絡因子を探すことが大事だということです。
交絡因子とは、今回のケースで言えば、肥満児の群と正常体重児/低体重児の群の両者に存在していて偏りがある”因子”のことで、喘息に関与している因子です。
例を挙げるとすれば、肥満児の群でよく食べる”A”という食品があって、正常体重児では”A”はあまり食べないとしましょう。
その”A”を摂取することが喘息の発症に関与しているとすれば、”Aをどれだけ摂取しているか”が交絡因子になります。
こういった交絡因子が全て分かっている時、その影響を全て除外した上で肥満と喘息との関連性を評価しないと、真の肥満と喘息との関連性がわかりません。
交絡因子は、要因と結果との関連性を歪めます。
交絡因子の影響をすべて除外して再評価したら、実は肥満と喘息との関連性はなかった、なんて結果が出てくることすらあります。
こういった場合は、肥満ではなくて、その交絡因子の方が喘息と関連しているという事になりますよね。
そうなると、肥満のことよりも、その交絡因子の方を何とかしましょうよ!という議論になるわけです。
やっぱり交絡因子、大事ですね。
とは言え、現状では未知の交絡因子については考えても仕方がないので、喘息を気にするのならば、体重は多くない方がよいでしょうと言っても良いと思います。
今回は以上となります。